やさぐれメモ

やさぐれた30代男性の自由帳

始発で出張

始発電車に乗ってまでして行かなければならない出張とは到底思えない、自分の意にそぐわない出張である。社内の圧力に屈してしまった。先月もそうだった。いずれも取引先がこちらの要求を満たさない、質の低いサービスを提供してきたことによる監査であるが、その監査には懲罰的な意味合いが多分に含まれている。発生した問題は些細なことで、しかし問題の根幹が基本的な部分だからこそ実査が必要なのだと言われると、「ああそうですか」と。まぁ確かに今日訪問する業界はこれまでなかなか機会のなかったこともあり、全く嫌というわけでもない。「やさぐれさんにはもっと実査の経験を」という会社の考えはありがたい。ただやはり僕は積極的にはなりきれていない。こういう主張のない、煮え切らない態度は会社員としては最低だと我ながら思う。

今回の出張原因となった問題は、例えて言えば「トイレの個室に入ったら紙がなかった」ので、これからは紙を切らさないように定期的に紙のストックを確認して再発防止に努めます、みたいな話だ。今日のポイントは紙のストック状況確認と、紙を切らさない仕組みの運用状況、そこから展開してトイレの清掃手順や清掃の実施状況、トイレを取り巻く環境確認といったところである。とはいっても実績の十分にある工場でトイレは温水洗浄便座、手洗いも温水温風泡ソープ完備、出入りも専用履き物、手のアルコール消毒を行わないと自動ドアが稼働せず、トイレから出られない=持ち場に戻れない仕組みが整っている。トイレは例えで、本当はもう少し複雑な製造工程だけど。

中小零細企業ばかりまわった昨年の経験からすると一見、今日の訪問先の管理体制は完璧だ(業界最大手で現預金ジャブジャブである)。だからこそ、紙がないなんて致命的なミスは絶対に許されない、ありえないというのがチームの結論だ。それは確かに僕自身もそう思う。そしてほかにもまだ何か、致命的なリスクが隠れている可能性はある。

 

電車の中で夜明けを見て、ビールのような色の朝日を浴びながら新幹線に乗っている。そういえば、まだ若い頃、思いがけずつまらなかった飲み会に参加したときは酩酊した頭で隣りの人のビールやスパークリングワインの泡を数えていたりしてやり過ごしていたけど、ここ10年くらいはそういったことはない。つまらなそうな飲み会には参加しないですむ環境で過ごせている。価値観が合わない人とは必要以上に無理に付き合う必要はない。

 

人生をすり減らさないことが、穏やかに生きるコツなのだろう。

 

結局、監査に行ってみて大きな問題は見受けられなかった。教育記録、製造日報、温度管理エトセトラ。この工場はもともとが優等生なのだ。不適合品が発生しても論理的に根治。論旨明快に講じており、何も言うことがなかった。監査の爪痕を残せたとすれば、更衣室の整理整頓と、たまたま無造作に置かれていた刃物はそこで使うのであればラックを用意して定位置保管で管理することなど。模範的な製造工場として訪問の価値は十分にあった。資金があるから機械設備の導入でいくらでも改善できる。チート。

 振り上げた拳をどこに下ろさせるか、そこまで考えるのは僕の仕事の範囲外だし、もう面倒だ。